六価クロムは、強い中毒性を持ち、気道障害や発がん、皮膚障害を起こすとされています。
そのため、六価クロムを取り扱う事業者は、厳しい法規制を守らなければいけません。
本記事では、六価クロム溶出試験を行う必要性と意義、実施のタイミングについて詳しく解説します。

六価クロム溶出試験とは?

六価クロム溶出試験とは、地盤改良工事に使用されるセメントや使用するセメント系固化材から、どれだけ六価クロムが水に溶け出すかを測定する検査です。

溶出試験は環境省告示の46号溶出試験に基づき行われ、六価クロムの溶出量が土壌環境基準(0.05mg/L)以下であることを確認します。

環境省告示46号とは、主に土壌汚染の基準を環境省が定めたもので、土に含まれる有害物質の溶出量が定められています。

別に環境省告示の13号溶出試験にも六価クロムの基準(1.5mg/L)が定められていますが、こちらは産廃として埋立をする際の基準となります。対象の用途を考慮し、どちらの基準と照らし合わせるか判断する必要があります。

なぜ六価クロム溶出試験が必要なのか?

六価クロムは人体への悪影響が指摘されている有害物質のため、土壌汚染対策法において特定有害物質として厳しい規制が設定されています。

セメントやセメント系固化材に含まれる三価クロムが、製造過程で高温で焼成されることで、強い毒性を持った六価クロムに変わってしまうのです。

本来、三価クロムは人体に無害で、レバーやあさり、ひじきやチーズにも含まれている物資です。人体の必須ミネラルとして、サプリメントとしても販売されている程です。

しかし、六価クロムが土壌から溶出し、地下水や河川へ流出すると、人体や環境に対して悪影響を及ぼす恐れがあります。そのため、環境庁告示46号に定められた溶出試験を実施し、環境や人体への影響がないことを調査しておく必要があるのです。

六価クロム溶出試験の実施が必要な工事・改良材は?

六価クロム溶出試験は、地盤改良をはじめとするさまざまなセメントを用いた工事で必要となる可能性があります。

該当する工事は深層混合処理や、地盤への薬剤注入、表層安定処理や路床安定処理、舗装工事などで、その他、セメントを含んだ改良土を使用した盛土、埋戻し、土地造成なども含まれます。

国土交通省が定めている対象工法は以下の通りです。

【溶出試験対象工法】

工種種別細別工法概要
地盤改良工固結工粉体噴射撹拌高圧噴射撹拌スラリー撹拌<深層混合処理工法>地表からかなりの深さまでの区間をセメント及びセメント系固化材と原地盤土とを強制的に撹拌混合し、強固な改良地盤を形成する工法
薬液注入地盤中に薬液(セメント系)を注入して透水性の減少や原地盤強度を増大させる工法
表層安定処理工安定処理<表層混合処理工法> セメント及びセメント系固化材を混入し、地盤強度を改良する工法
路床安定処理工路床安定処理路床土にセメント及びセメント系固化材を混合して路床の支持力を改善する工法
舗装工舗装工各種下層路盤上層路盤<セメント安定処理工法>現地発生材、地域産材料またはこれらに補足材を加えたものを骨材とし、これにセメント及びセメント系固化材を添加して処理する工法
仮設工 地中連続壁工(柱列式)柱列杭地中に連続した壁面等を構築し、止水壁及び土留擁壁とする工法のうち、ソイルセメント柱列壁等のように原地盤土と強制的に混合して施工されるものを対象とし、場所打ちコンクリート壁は対象外とする
<備考>1.土砂にセメント及びセメント系固化材を混合した改良土を用いて施工する、盛土、埋戻、土地造成工法についても対象とする。
2.本試験要領では、石灰パイル工法、薬液注入工法(水ガラス系・高分子系)、凍結工法、敷設材工法、表層排水工法、サンドマット工法、置換工法、石灰安定処理工法は対象外とする。

情報引用元:https://www.mlit.go.jp/tec/kankyou/kurom/pdf/siken.pdf

六価クロム溶出試験はいつ行う?

六価クロムの溶出試験は、下記3回のタイミングで行われ、いずれも対象となる地盤からサンプリングした試料を用います。また改良処理をした再生路盤材や改良土などは、実際に利用する前に溶出試験を実施し、安全性の確認を行います。
基本的には試験方法1をまず実施し、このとき六価クロムの溶出量が土壌環境基準(0.05mg/L)以下であれば、試験方法2と3は免除されることも多いです。
ただし、六価クロムの溶出濃度が高いとされる火山灰質粘性土(関東ローム、九州灰土など)を改良する場合は、すべての検査を行い分析する必要があります。

【試験の概要】

試験方法時期
試験方法1配合試験中、材齢7日を基本に実施
試験方法2地盤改良施工後、28日後を基本に実施
試験方法3
(タンクリーチング試験)
試験方法2の結果が土壌環境基準を超えた場合

※改良土が火山灰質粘性土の場合は全試験が必要

六価クロム溶出試験は事業者の義務

六価クロム溶出試験は、健康や環境への影響を最小限に抑えるための大切な試験であると同時に、事業者が果たすべき義務でもあります。

国からも地盤改良工事によって人体への影響がないことを保証し、安全な工事を実施することが求められているからです。
社会的責任を果たすだけでなく、自然環境を保護するためにも、六価クロム溶出試験は事業者にとって避けて通れないプロセスとなるでしょう。
六価クロム溶出試験についてご質問やご相談をご希望の場合、下記にてお問い合わせを受け付けております。翌営業日までに担当者より回答させて頂きますので、どうぞお気軽にご連絡ください。

https://sanpaibunseki.com/soil/