産廃の処分を検討する際、「溶出試験の結果が必要」といった旨の指示を耳にすることが多いかと思います。産廃の溶出試験の場合、多くが「環告13号」又は「環告46号」準拠の結果が必要になります。

弊社でも産廃分析のご相談をいただくと、「溶出試験とは?」「環告13号と46号の違いは?」「具体的な試験内容を知っておきたい」などのご質問をよく受けます。

そこで本記事では、環告13号と46号の違いや必要性、溶出試験についてくわしくご紹介いたします。正しい知識を得ることでどのようなケースでどのような分析が必要か判断する一因になるかと思われますので、ぜひ最後までお読みください。

環告13号と46号の違い

環告13号環告46号
名称昭和48年2月17日環境庁告示第13号平成3年8月23日環境庁 告示第46号
主な法令対象産業廃棄物産業廃棄物の埋立基準土壌土壌の環境基準
主な項目・基準溶出量 25項目、含有量 1項目溶出量 28項目、含有量 3項目

環告13号と46号は、どちらも環境省(旧環境庁)が公布した告示の番号を基にした呼称となります。二つの大まかな違いは、目的と係る対象(検体)及び基準値となります。環告13号は、主に産廃関係に係る内容で、処分をする際に埋め立てても問題がないか(埋め立てた際に周辺土壌を汚染しないか)を確認するための基準・分析となります。埋立処分場は基本的に、こちらの基準を満たした産廃しか受け入れ・埋め立てができないため、産廃を受け入れる前に必要項目の分析結果を求められることになります。

一方の環告46号は、土壌の環境基準を規定しています。環境基準は、我々が健康に生活するために必要な環境の目標値としての基準であり、土壌の場合は、その土壌上で健康被害を受けることなく生活できるかを確認するための基準・分析となります。人々の健康・安全に直結する基準ですので、産廃埋立に係る基準である環告13号よりも厳しい基準値が定められている項目がほとんどです。

土壌関係の分析に係る告示は、土壌汚染対策法関係の「環告18号」「環告19号」などもあります。

上記のように環告13号は産廃の基準、環告46号は土壌の基準で、環告46号の方がより厳しい基準、と大まかに分類できます。産廃の処分では基本的に環告13号の基準・分析で問題ありませんが、処分場によっては、より厳しい基準である環告46号の基準を管理基準として採用しているケースもあり、この場合は産廃の処分であっても、環告46号準拠の分析が必要になることもあります。また産廃を再利用し、何らかの形で環境放出をする場合にも、環告46号の基準を満たす事が条件になることがあります。

環告13号についてより詳しく!

名称:昭和48年2月17日 環境庁告示第13号 産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法

先ほど環告13号は産廃関係に係る基準・分析と説明しましたが、正確には、産廃の分析方法について定めている告示であり、基準については別の法令(昭和48年 総理府令第5号 通称:判定基準省令)で規定されています。

廃棄物全般について定めている廃棄物処理法(廃掃法)が大変複雑な法令で、その影響で下位の法令や告示も多岐に渡り、基準と分析方法が別の法令で管理されているのが現状となります。

環告13号では34項目の溶出試験についてと、別にダイオキシン類の含有試験について定めています。このうち一部の溶出試験については、海洋投棄時に必要な項目となります。海洋投棄がほとんど実施されなくなった現在は、分析の機会が少なくなっており、これらの項目を除く25項目が、溶出試験のメイン項目となります。具体的には以下の項目について定められています。

No項目基準値(溶出量)※1
1アルキル水銀化合物不検出
2水銀又はその化合物0.005 mg/L 以下
3カドミウム又はその化合物0.09 mg/L 以下
4鉛又はその化合物0.3 mg/L 以下
5有機燐化合物1 mg/L 以下
6六価クロム化合物1.5 mg/L 以下
7砒素又はその化合物0.3 mg/L 以下
8シアン化合物1 mg/L 以下
9PCB0.003 mg/L 以下
10トリクロロエチレン0.1 mg/L 以下
11テトラクロロエチレン0.1 mg/L以下
12ジクロロメタン0.2 mg/L 以下
13四塩化炭素0.02 mg/L 以下
141.2-ジクロロエタン0.04 mg/L 以下
151,1-ジクロロエチレン1 mg/L 以下
16シス-1,2-ジクロロエチレン0.4 mg/L 以下
171,1,1-トリクロロエタン3 mg/L 以下
181,1,2-トリクロロエタン0.06 mg/L 以下
191,3-ジクロロプロペン0.02 mg/L 以下
20チウラム0.06 mg/L 以下
21シマジン0.03 mg/L 以下
22チオベンカルブ0.2 mg/L 以下
23ベンゼン0.1 mg/L 以下
24セレン又はその化合物0.3 mg/L 以下
251,4-ジオキサン0.5 mg/L 以下
※2有機塩素化合物
※2銅又はその化合物
※2亜鉛又はその化合物
※2弗化物
※2ベリリウム又はその化合物
※2クロム又はその化合物
※2ニッケル又はその化合物
※2バナジウム又はその化合物
※2フェノール又はその化合物

※1 基準値は判定基準省令より抜粋

※2 現在分析頻度が低くなった項目

産廃は汚泥や残土、燃え殻・焼却灰、鉱さい、廃酸・廃アルカリなど様々あるため、対象が何なのかで必要な分析項目が変ります。対象の産廃が何に該当するのか、どんな項目を分析する必要があるのか、については処分場ごとに解釈が異なるため、分析項目の選定には注意が必要です。(例えばブラスト砂が対象の場合、鉱さいとして溶出7項目を求める処分場もあれば、汚泥として溶出25項目を求める処分場もあります。)

環告13号の分析の結果、基準値を超過する項目がある場合は、一般的な処分場では受け入れる事ができません。より厳重な管理を行う遮蔽型の処分場にて処分する、対象有害物質を封じ込め・除去等する中間処理をする、などの対策が必要になります。PCBなど受け入れ可能な処分場が極端に限定される項目もあるため、検出の可能性がある有害物質がある場合は、それを想定した処分先の選定が必要になります。

参考:https://www.env.go.jp/hourei/11/000178.html

産廃処分における溶出試験

環告13号が産廃向けの法令であることは前述した通りですが、そもそも処分をするのに溶出量を気にするのはなぜ?といった疑問があるかと思います。溶出試験についても含め、簡単に解説します。

まず溶出試験とは何かについては、簡単に言えば、「対象の物質(検体)から特定の物質(有害物質項目)が水にどれだけ溶け出すか」を調べる試験となります。少々面倒な考え方ですが、これは土壌の汚染についての考え方をベースとしています。

土壌の汚染は、土壌(土地)そのものが大きく移動し、汚染を拡大するケースは珍しく、雨水や地下水といった水を媒介として汚染が拡大することが基本です。そのため土壌汚染のリスクは、対象土壌(土地)から有害物質が水に移る量が多い程、危険と判断されます。そのような理由から、土壌の環境基準などは、溶出量の基準値を定め指標としています。

では土壌の考え方がなぜ産廃へも反映されているのかといえば、産廃の処分は最終的に「埋める」からです。現在の日本では産廃の処分は何らかの形で埋め立てることが基本となります。地面(地中)に埋めるということは、土壌中に埋めるということです。産廃の成分が周辺の土壌に影響を与えるかもしれません。

もちろん、産廃の処分場は、埋め立てた産廃が周辺に影響を与えないような設計や対策を講じていますが、何らかの想定外な事態が起こる可能性は否定しきれません。そこで、埋め立てる産廃から大きな汚染の影響を受けないよう、「そもそも有害物質をそこまで溶出しないものだけを埋め立てよう。」ということが産廃埋立の基本的な考え方となります。

もし産廃を埋め立てた土地から有害物質の汚染が発生した場合、まず地下水が汚染されますので、周辺の草木や動物などの環境への影響が発生しますし、人が利用する水源に到達するような地下水脈が汚染されれば、人への健康被害の発生も考えられます。地下の水脈は広大で、しばしばルートが変化するため、汚染がどのように・どこまで広がっているか把握することが困難です。汚染が発生してしまっては取り返しのつかないことが多いため、事前に汚染の発生を防ぐリスク管理が重要となります。

上記のようなことから、環告13号(及び判定基準省令)にて産廃の溶出試験について定め、各処分場は産廃を受け入れる前に、埋め立てても問題ないものか確かめる意味で溶出試験の結果を求める、という構図になっています。

環告13号の分析方法

〇 検液作成(溶出操作)

溶出試験は、対象検体と水を一定量・特定の手順で混合操作し検液を作成し、その検液を分析することになります。環告13号の検液作成は、検体種(汚泥、燃え殻・焼却灰、鉱さいなど)と分析する項目(重金属項目、PCBなどの農薬系項目、揮発性有機化合物項目など)によって手順が異なります。海洋投棄向けの検液作成についても定められていますが、こちらは前述しましたように、昨今はほとんど利用されていません。

本項では最も利用頻度の高い汚泥や燃え殻の検液作成(VOC項目以外)の方法を以下に示します。

  1. 燃え殻、汚泥又はばいじんを採取し、有姿のまま小石等の異物を除去
  2. 粒径 5 mm 以下を超える場合は適正粒径に破砕
  3. 試料と溶媒(純水)を重量体積比で10%の割合で混合し、混合液の総量が500 mL以上になるように調整(使用する容器は溶媒の体積のおおむね2倍のものを用いる)
  4. 3の試料を水平振とうし、溶出操作を行う
  • 常温(おおむね 20℃)・常圧(おおむね1気圧)
  • 振とう回数:毎分200回
  • 振とう幅:4cm以上5cm以下
  • 振とう時間:6時間連続
  1. 溶出操作後は、溶液を速やかに遠心分離機(遠心加速度:3,000G以上)により20分間の遠心分離を実施
  2. 遠心分離後の上澄み液を孔径 1 μm のメンブランフィルター(ろ紙)を用いてろ過し、これを検液とする

〇 分析

作成した検液を用いて、各項目ごとに定められた方法にて分析を実施します。方法は日本工業規格(JIS)や関係省庁の施行令・施行規則・告示などで別途定められた方法が主なものとなります。多くの項目は、1つの方法限定ではなく、複数の方法が規定されていますので、その中から各機関が適切な方法を選択することになります。

弊社では、原子吸光法(フレーム原子吸光法)、ICP発光分光分析法(分光法)、イオンクロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ質量分析法、などを主に採用しています。

手順参考・引用元:http://www.o-sanpai.or.jp/pdf/info_manual20191007.pdf

環告46号についてより詳しく!

名称:平成3年8月23日 環境庁告示第46号 土壌の汚染に係る環境基準について

環告46号はその名の通り、土壌の環境基準を具体的に定めた告示となります。前述しましたように、人の健康的な生活に係る基準であるため、ほとんどの項目で環告13号よりも厳しい基準値が定められています。

環告46号は環告13号とは異なり、この告示内に基準値と分析方法について定められており、別表にて一覧化しています。項目は溶出試験が28項目、含有試験が3項目定められてます。このうち含有試験の3項目は、農地且つ田にのみ係る基準であるため、需要が限定的です。そのため、溶出28項目のみを指して「環告46号試験」と呼称するケースも少なくありません。環告46号での分析を指示された場合、含有試験まで必要か確認しておくとよいかもしれません。

溶出試験の28項目うち、25項目は環告13号の溶出25項目とほぼ同一です。(1,2-ジクロロエチレンのみ、13号:シス-1,2-ジクロロエチレン、46号:1,2-ジクロロエチレンという違いがあります。)残りの3項目は、「クロロエチレン」、「ふっ素及びその化合物」、「ほう素及びその化合物」となり、この3項目は環告46号のみの項目となります。

産廃の分析において環告46号の分析を求められるケースは主に2つと思われます。1つは受け入れ先の処分場が独自基準で環告46号の基準を採用している場合です。環告13号の項でも説明しましたように、産廃を埋め立てる都合上、周辺土壌への影響は常に懸念点となります。そもそも土壌の環境基準を満たしているものであれば、汚染される可能性も低いと考えられますので、土壌の基準を受け入れ基準とする事は、安全性を重視した結果と受け取れます。

もう1つは、対象産廃をリサイクルし、再度環境へ放出する場合です。例えば、汚泥を肥料へと再処理し、それを畑などに利用する、といった事業の場合、汚泥産廃であったものを、肥料として土壌中に混ぜ込む事になります。なんの対策も講じていない一般的な土壌へ放出するため、産廃の基準ベースで考えると、環境への悪影響の評価が正しくできません。より高い安全性を担保するために土壌環境基準での評価が必要となります。

もちろん、最終的に放出するもの(再利用品)が環境基準を満たしていれば問題ない場合がほとんどですので、処理・加工前の産廃が必ずしも環境基準を満たしている必要はないのですが、そもそもの再利用の適正判断や中間処理の仕様を考察するために必要なデータとなるため、産廃の段階で環告46号試験をまず実施するということが多いようです。

参考:https://www.env.go.jp/kijun/dojou.html(付表)

環告46号の分析方法

環告46号の溶出検液作成・分析の方法は、概ね環告13号と同様となります。検液作成の際に2点程明確な違いがあります。

・検体の風乾

環告46号試験では、試料採取後すぐに溶出操作を行わず、検体を風乾(乾燥)させます。環告46号は土壌を対象としているのですが、土壌は周辺環境や採取日前後の天候により、例え同じ土地の土壌だとしても、採取のタイミングによって含水率が違います。そのため水分による分析結果の誤差をできるだけ抑えるために、まずは水分を乾かす工程を加えています。

風乾を前提として基準値などが定められているため、産廃が検体であっても、基本的には同様に風乾を実施します。ただし、VOC項目を分析する検体に関しては、風乾をすると結果に影響を及ぼすため、風乾を行わずに直ちに溶出操作を実施します。

・検体の粒径

検体の粒径も環告13号と異なり、環告46号では、より細かい2mm以下の粒径のものを検体とします。土壌が検体の場合はそこまで難しいことではありませんが、多種多様な種類が混在する産廃の場合、この粒径が非常に高いハードルになることもあります。場合によっては風乾前に破砕作業を挟む必要があります。

手順参考・引用元:https://www.env.go.jp/kijun/dt1-1.html(付表)

産廃分析における環告13号・46号の違いを理解し、適切な分析方法を選択しましょう

本記事では、環告13号・46号の違いや必要性、具体的な分析方法についてご紹介しました。双方とも環境や我々の健康的な生活の保全を目的としていますが、法令が懸る対象と考え方の違いによって内容が異なります。実際に産廃を処分する際には、どのような考え方のもと、どのような分析が必要か適切に判断する必要があります。「どうすればいいのか分からない」といった場合は、まずは受け入れ先の処分場へ問い合わせるとよいかと思われます。

その後、分析に関する不明点などありましたら、下記にてお問い合わせを受け付けております。

翌営業日までに担当者より回答いたしますので、お気軽にご連絡ください。

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