廃棄物について

「廃棄物」には、主に家庭生活により発生する「一般廃棄物(=一廃)」と、産業活動により発生する「産業廃棄物(=産廃)」が存在します。「一廃」は主に市町村に処分責任があるため、各自治体にて処分体制が整えられています。一方「産廃」は排出者に処分責任があるため、排出する企業等が適切に処分する必要があります。

なぜ産廃の分析が必要なのか?

産廃を処分する場合、国内であれば最終的には「埋立処分」となることがほとんどです。

土に産廃を埋める形になるため、その産廃に有害物質が多量に含まれていると、周辺の土壌を汚染してしまう危険性があります。そのため廃棄物処理法では特定の有害物質について「埋立基準」を規定し、様々な種類の産廃ごとに埋め立ててもよい有害物質のボーダーラインを定めています。

各地の処分場は管轄の行政の指導のもと、これらの基準を満たした産廃のみを受け入れる仕組みになっています。(また処分場周辺の環境汚染をしていないか、厳しいモニタリングを定期的に行っています。)そのため処分場に産廃を持ち込む場合、有害物質が基準値以内である証明を求められることになります。この証明を獲得するために、産廃の分析が必要となるのです。

産廃分析の種類

廃棄物処理法に規定される基準は、有害物質によって「溶出」に対する基準と「含有」に対する基準とがあります。この「溶出」と「含有」とは何か、以下に簡単に説明します。

溶出(試験)

端的に表すと「対象産廃から(対象の)有害物質がどれだけ水に溶け出すか」を調べる試験となります。
土壌汚染は雨水や地下水を媒介として広がるという観点から、特に水に溶け出す性質に主眼を置いています。重金属系の有害物質をはじめ、25項目において溶出基準が規定されています。

含有(試験)

端的に表すと「対象産廃そのものに(対象の)有害物質がどれだけ含まれているか」を調べる試験となります。
溶出試験に比べ、よりそのものに含まれているであろう有害物質の量を把握することができます。ダイオキシン類や水銀についてはこちらの含有基準も規定されています。
各基準は多様な産廃の性状ごとに係る項目が異なります。そのため溶出・含有の全ての分析を実施しなければならないというケースは多くありません。対象の産廃について必要な分析項目を把握し、適切に実施する必要があります。

各産廃の分析傾向について

それでは、産廃の性状の違いによりどのような分析が必要なのか、見ていきましょう。

※ここでは廃棄物処理法の分類を例に説明しております。実際は自治体や処分場ごとの独自の基準等も関わってくるため、必ずしもこちらの説明と合致するとは限りません。

汚泥

「汚泥」と一言で言い表しますが、成分や形状で非常に多くの形態が存在する産廃です。また複数種の産廃が入り混じったものは最終的に汚泥と判断されることもしばしばあります。カテゴリー内に内包する性状が最も多い産廃区分といってよいでしょう。
そのため規定される有害物質も多く、溶出の25項目及び水銀(含有量)が必要となります。発生過程によってはダイオキシン類も必要となります。
実際にはこのほかに、含水率や油分といった廃棄物処理法の一覧表にない項目も追加されることもあるため、「25項目+α」の分析が必要と認識しておくとよいかもしれません。

汚泥残土 溶出試験25項目検査

残土、建設発生土

土壌の産廃全般となります。カテゴリーとしては「汚泥」として扱われることが多いです。
産廃として処分する場合は汚泥同様、「25項目+α」が必要なことが多いです。もし他の土地に持っていき再利用する場合は、土壌環境基準での分析が必要かもしれません。土壌環境基準は産廃の埋立基準より厳しい基準であるため、産廃の分析結果を代用できないことがしばしばありますので注意が必要です。

汚泥残土 溶出試験25項目検査

土壌環境基準 28項目検査

燃え殻、ばいじん、焼却灰

一度焼却処理をした燃え殻、ばいじん、焼却灰等の産廃全般となります。
焼却処理前提のため、焼却過程で消滅しているだろう有害物質については対象外となります。そのため溶出項目は7~8項目となります。一方、焼却過程で発生しやすいダイオキシン類については、ほとんどの検体で実施が求められる特徴があります。その場合追加項目として対応可能です。
焼却処理後の産廃のほか、焼却炉を構成していた耐火レンガや断熱材もこれらのカテゴリーとみなされることが多いです。

燃え殻・ばいじん等7・8項目検査

塗膜

橋梁や鉄塔、水門などの鋼構造物に塗布された塗料を剥離した産廃の総称です。平成後半より注目度が上昇した、比較的新しいカテゴリーとなります。
「特定の期間に製造された鋼構造物用の塗料には、鉛、クロム、PCBを使用していた」という事実から、鉛、クロム、PCBの3項目が必要項目の基本となります。
他の産廃と違い、含有試験と溶出試験の目的が違うことが特徴で、「産廃として処分する」という観点から考えると、溶出の3項目とPCBの含有量が必要となることが多いです。特にPCBの含有量が一定値を超えると「低濃度or高濃度PCB汚染廃棄物」として扱われるため、処分するまでの過程が通常の産廃とは大きく異なることになります。

塗膜含有・溶出試験 3項目検査

廃酸、廃アルカリ

液状の産廃の総称です。液体の産廃は廃酸・廃アルカリのどちらかで処理されます。
液体という性質上、溶出試験は存在せず、分析は全て含有試験となります。液体そのものに内包している含有量の結果であるため、個体産廃の溶出基準よりは少し高めで基準値が規定されています。
項目の考え方は汚泥とよく似ており、「25項目+α」が基本となりますが、汚泥に比べ構成成分が把握しやすいため、状況によって項目数はより少なくて済むこともあります。

廃プラスチック(=廃プラ)

プラスチック系の産廃の総称となります。
廃プラには埋立基準が係らないため基本的には分析の必要がありません。ではなぜここに名が挙がっているのか、それは2021年1月のバーゼル法改正に起因します。
廃プラの輸出入(廃プラの国境を越えた移動)に関して、今までは廃プラの汚染状況は特に重要視されていませんでした。しかし改正により廃プラが有害物質に汚染されていないかの確認が必要となり、この場合において廃プラの分析が必要となるケースが増えています。
バーゼル法では廃棄物処理法とはまた違う考え方で有害物質の基準を定めており、また輸出入の相手国によって求められる項目も変化します。そのため「この項目が基本」という項目がなく、必要項目の事前確認がより重要になってきます。

おわりに

一言で「産廃」といってもその中身は多種多様です。今回はよく分析依頼がある産廃を取り上げて紹介しましたが、実際はこれら以外の産廃の分析が必要であることも多々あるかと思います。
また産廃の受け入れ先や管轄の自治体などによって考え方や基準が変化することもあり、全体的に複雑且つ難解になってしまうことが多いのが、産廃処分の現状です。「まだまだ分からないことがある!」という方は、ぜひ直接お問合せいただければと思います。

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